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ソーシャルワークX人工知能、「FLOW AI」から生まれた新時代の障害者雇用とは

文/Flow AI Blog編集部

人工知能に仕事を奪われるのではないか、というのは多くの方が危惧していることでしょう。しかし一度我々FLOWのAIデータ処理部門の仕事現場に足を運んでいただければ、その考えを改めるのかもしれません。

一旦、カメラを台湾の南部、台南市へ向けてみましょう。

弊社のAIデータ処理部門のオペレーション・チーム( OT)の責任者である蘇佩萱(スー・ペーシェン)は、同僚と一緒に台湾新幹線から鉄道、最後はタクシーに乗り換えてアノテーターの自宅に訪ねました。周りは、見渡す限りの農地。ここ2ヶ月、蘇は常にアノテーターのご自宅か、もしくは訪問に向かっている途中で、少なくとも20回の面談を終えています。

おかげで、彼女は台湾をほぼ一周して、花蓮県にある先住民集落にまで自ら赴きました。彼女のほかに各部門担当者、福祉士、作業療法士、更にはセラピストの方々も同行しています。

彼女たちはアノテーターの自宅に訪問し、最低でも2時間をかけてアノテーターの作業環境と生活状況を直で観察します。作業療法士による衛生面の指導もしっかり行い、体に障害のある方がより良い在宅介護を受けられるよう支援しています。

住宅訪問の時、蘇はいつも手元にアンケート用紙の束を置いています。今回、彼女はアノテーターたちのワークフロー及び作業プラットフォームへのフィードバック、そしてこの仕事により得られた変化などに着眼し、来年のオンライン採用プログラムをより洗練されたものにするためにこのデータを活用します。

住宅訪問を3件終えるたび、必ずできるだけ早めにアンケート結果と意見をまとめ、それを関聯部署に送るようにしています。「詐欺集団なんじゃないかと疑われましたよ。無条件に経験のない障害者の方に仕事や職業訓練を与えてくれるなんて、そんな美味しい話は普通ありえない」と、彼女は初めての住宅訪問のことを思い出しながら話してくれました。「この経験のおかげで、我社の理念と運営方針を身を持って体現でき、心の支えとなりました。」

0から1へ、障害者のキャリア形成について

弊社FLOWでは、OT 部門は障害者パートナーたちが在宅作業を行うために最善を尽くしてサポートしています。採用面接から適正分析、相談、職業訓練、人員配置や補助器具のアドバイスなど、下記の表にある一連の流れを担うのがOT部門です。その構成員の多くは、社会福祉、心理学、人事管理や教育訓練関聯の専門家です。

しかしながら、OT部門ができた当初ではメンバーのほとんどが順応できませんでした。過去受けた訓練はケース・バイ・ケースで考えるように教えられていますが、弊社に在籍する2百余名のアノテーターを前にすると、どうしても荷が重く感じてしまうという。

弊社の代表取締役である陳潔如(サブリナ・チェン)氏は、何度か住宅訪問に同行したのち、相手の身になって考えるようアドバイスをしました。

一人ずつではなく、何百何千人の障害者の方々を持続的に支援できるシステムを作りましょう。

この2年間の運営でOT部門のスタッフたちは、ソーシャルワークの分野とは異なるAI事業の現場でアノテーター向けの補助器具開発から職業訓練、果てにEAP(従業員支援プログラム)の作成まで、社会福祉士としての仕事内容と役割は静かに変化しています。

とはいえ障害者の方にアノテーションを任せると聞いて、きっと誰もがある疑問を頭に浮かぶでしょう。

本当にできるのか?

弊社では、OT部門のスタッフたちが「ワークリデザイン」の理念、そして案件から得たデータとお客様から頂いた声に基づき、優れたデータアノテーターが持つべきコアスキルを定義し、日々の業務実績を通して疑問の声を肯定に変えていきます。

コアスキルというのは、ロジカルシンキング、面積比弁別力、身体運動能力と輪郭線判別力の4つの指標が含まれています。OT部門は試験結果やプロジェクトの進捗状況などから得たデータを使い、アノテーターに必要な専門的能力をまとめました。

「面積比弁別力」を例にとりますと、「車が画面に ⅔ 表示されたらボックスで囲め」という指示は分数の概念さえ理解していれば難しくないように思えますが、いざ実際にパソコンの前で操作すると行き詰まってしまう人も少なくありません。

これに関して、人間の脳は奇数で数字を割るのが苦手なつくりだからです。こういう場合は、試しに「3/4」にすると意外と上手くいくものです。

(関連記事:アノテーション作業で遭遇するハードルとは何か?

また「身体運動能力」につきまして、寝たきりや筋肉が萎縮した障害者パートナーの場合、動きの不自由さに伴い両手での操作が難しい方もいます。これに対し、自社製プラットフォームに「スマートツール」を搭載することで、身体障害のある方でも予定通りに、もしくは作業を前倒しで完成できるようサポートしています。

FLOWと障害者パートナーの協力体制は、4つの取組みに基づいています:

1.業務フロー設計
2.職業訓練
3.試験と資格認定
4.品質管理プロセス

一旦プロジェクトが始動すると、OT部門はプロジェクトマネージャーと共にアノテーターの作業状況とその良し悪しについて分析し、適時に訓練を行い、励ますことでアノテーターのモチベーションを高めます。

現在、弊社のIT部門はこれらのデータをクラウド化し、アノテーター含む全員がリアルタイムでそれぞれのパフォーマンスを見られるように開発を進めています。

「これを実現できれば、適材適所な人材配置も夢物語じゃなくなります」と、弊社のEAP担当である郭芃沂(カク・ポンイー)はこのように話しました。

現在、弊社のIT部門はこれらのデータをクラウド化し、アノテーター含む全員がリアルタイムでそれぞれのパフォーマンスを見られるように開発を進めています。

「これを実現できれば、適材適所な人材配置も夢物語じゃなくなります」と、弊社のEAP担当である郭芃沂(カク・ポンイー)はこのように話しました。


助けられる側から、助ける側へ

このように、弊社FLOWとOT部門の使命は、障害者の方々が働く上で遭遇する身体的と心理的ハードルを取り除くことにあります。

オンライン採用からプロジェクト完了まで、全てOT部門の障害者パートナーへの理解と共感の深さにかかっています。一般労働者にとって騒ぎ立てるほどではないようなことでも、障害者の方々にとっては大問題な可能性もあります。

弊社でアノテーターを勤めている障害者パートナーの多くは、少し前まで単独で外出すらできないというハンデのせいで就職もままならない状況でしたが、データアノテーションの場合は自宅にいてもパソコンさえあれば働くことができます。

蘇の観察によると、「以前ではハンデだったことが、一転にしてアドバンテージに変わりました。このチャンスを非常に大事にしてるので、とても慎重な仕事ぶりをしてくれますし、報連相も積極的」らしい。

陳代表取締役はこれまで何度もこの運営体制について講演などの場合で語ってきましたが、いつも講演後に「いいアイデアだ、さぞ儲かるでしょう」と評価する方がいるそうで、これに関し彼女は笑うに笑えずに「身体障害者の方に仕事を継続的に提供する大変さは、一般の方には想像もつかないものです。会議の手配から研修設計、プラットフォームのデザインまで一から考え直す必要がありますので」と話しました。

蘇は、以前あった予定より前倒しで提出しなければならない案件のことを思い出す。マネージャー達は、決められた量の作業を完成したアノテーターが翌日の朝6時から、プラットフォームに登録して新しい仕事の受け取りができるようにしましたが、一足早く登録するために不安や胃痛で夜も眠れず、5時の頃からずっとパソコンの前で待機してる人もいることを住宅訪問を通して知り、OTスタッフはすぐにマネージャーチームに連絡して仕事配分プロセスの再設計に着手しました。

OTスタッフたちは尊重と思いやりの心を持ち、障害者目線で一つ一つのことについて再考察し続けています。このような場面は、日々弊社の会議室で繰り広げられています。例えば、講演の時は障害者パートナーの写真を出していいか否かについて、出したら出したで偽善者や本筋からそれているなどの批判を受ける恐れがありますし、出さなかったら説明しにくくなるかも……など、なかなか難しい問題です。

画像/ OTスタッフの朝は早い。住宅訪問時は移動時間を利用しておさらいをし、教育訓練からプロジェクト進行の流れ、作業効率から障害者パートナーの仕事の状況まで、逐一検討し情報を確認します

さらに弊社には、パソコンやモニター、WiFiルーターなども設備を置く専用倉庫があります。これは作業環境の整っていないアノテーターに貸し出すためで、補助器具選びのアドバイスもしています。

例えば脳性麻痺を患っているパートナーには、OT部門のスタッフが適切なマウス選択やショートカットキーの設定をしてくれます。直近の例について蘇に聞くと、「先週は台南に住んでいるアノテーターのお宅に訪問して、実際の作業状況を観察する時、他のゲーミングマウスに変えたほうがいいと提案したところ、一時間あたりのラベリング量がなんと倍になりました」と話しました。

住宅訪問のたびに、蘇は必ずある質問をします。

「FLOWに出会わなかったら、今頃どんなお仕事をしていると思いますか?」

これに対し、あるアノテーターは「考えたくもない」と返しました。彼の場合、十数年の間ずっと就職活動をしてきましたが、上手くいった試しがないという。中には、頑張って面接会場まで行ったのに、一息つく暇もなく「障害者だから」という理由だけで落とされたことも。

OT部門で教育訓練を担当している、同時に障害者でもある賴若秦(ライ・ローチン)はこの間、台湾で最も影響力がある社会的企業プラットホーム・社企流(Social Enterprise Insight)の十周年記念フォーラムで、弊社の陳代表取締役と共に講演をしたばかりです。

FLOWに入る前に、彼女は毎日自身の病気と向き合い、外で就職するか、あるいはフリーランスとして働くかについてひどく悩んでいました。FLOWに就職してから、業界の変化に伴い仕事も日々変わっています。頼は自身を変形し続ける「トランスフォーマー」と表現し、「助けられる側」から「助ける側」になるために、これからも障害者雇用に関わっていきたいと考えていると話しました。

頼さんの決断、そして弊社の理念は決してただの希望的観測には留まりません。実際、障害者の雇用はAIという大波に乗って新たなトレンドになりつつあると、世界有数のアドバイザリー企業ガートナーが最近発表した報告で指摘されています。

2023年までに、人工知能とテクノロジーの発展によって、障害者の雇用機会は3倍に増えると予想されています。

「普段の何気ない行動でも、他人の人生に影響を与えてしまうこともあります」と、頼は言いました。

彼女と弊社のOTスタッフは、初心忘るべからずと、このビジネスモデルが長く続いていくために今日も多くの障害者の方に雇用機会を創出し続けています。

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