in

【AI欠陥検査実例】データ専門家による、ドローン活用のスマート保安で橋梁・危険建物を点検

文/ Jessica Chien, FLOW AIデータ処理事業部担当者

前書き:
2019年、台湾で起きた南方澳大橋の崩落事故は多くの死傷者を出し、社会に大きな衝撃を与えました。事故の原因を調査すると、この橋はもう3年もメンテナンスを受けていないことが判明されました。

しかし、人力による点検は、必ずと言っていいほど長時間作業・高コスト・高リスクという3つの課題に直面します。そのため「人工知能」を活用する点検手法は徐々に広がり、今や次世代保安検査の標準装備となりつつあります。

台湾全土では合計12,000以上の道路、鉄道と橋があり、島の交通や経済活動を支えています。これらの安全性を維持している縁の下の力持ちこそが、保安検査員の方々です。

保安検査は簡単?難しい?

台湾は日本と同じく地震帯に位置します。地震の他に台風による大雨、険しい山間部による強烈な雨食などの自然災害で橋は様々な不安要素を抱えています。ひび割れ、錆びや⽼朽化などの問題に対して、定期点検はもちろんのこと、災害に見舞われた際も危険を承知してメンテナンスを行わなければないので、保安検査員たちは音をあげながらも職務を全うするほかありません。

橋梁だけでなく、道路と鉄道の舗装やガードレール、トンネルの暗渠、大型煙突、高圧送電塔、ビルの内・外壁、港湾クレーン…などなど、目に入るほぼ全ての大型公共施設は保安検査の対象と入ります。

建物のコンクリートにひび割れが発生すると湿気が侵入し、鉄筋はむき出しになり錆びてしまい、橋の耐荷性能と耐震性能の低下を招き劣化を加速させます。取り返しのつかない事故を事前に防ぐため、保安検査は「先回りして」「延命処置」を行わなければなりません。

センサーを通して共振周波数などをモニタリングすれば橋全体の温度、変位、変形の数値を取得できますが、これらの精密機器は高価な上、近年新しく建造されてかつ特殊な構造の施設にしか適用されません。万全を期すには、センサー以外にも定期的に検査員による目視検査をする必要があります。

人力でこういった損傷を見つけ出すのは生半可なことではありません。補助器具を備えている建物はごく少数で、大体の場合は検査員が命を賭けて雨風の中で上り下りしながらデータを収集する必要があります。これがまた、長時間作業・高コスト・高リスクと言った問題が発生します。

幸いなことに、人工知能の時代がやって参りました。

ドローンを使用すれば、わずか十数分で必要な映像データを収集できます。

作業工数とコストを大幅に削減できる上、人員の安全も守られます。

これまでも保安検査を特に重視してきた日本は、2020年開催予定だった東京五輪に向けて公共安全に注力しています。AIを駆使し、スマートメンテナンスで橋梁や建物に潜むひび割れを始めとする損傷を検出し、事前に補修と再建を行うことで世界各国のアスリートたちと観戦者に安全・安心な環境を提供しようと取組んでいます。

弊社の日本のお客様はこのビジネスチャンスを嗅ぎつけ、2年も前に既に弊社に訪ねて関聯データのアノテーション業務を依頼していました。


「スマート保安」への第一歩はデータから

建物の損傷はひび割れ、錆び、鉄筋露出やコケなど何百通りもあり、それぞれのノウハウがあります。

弊社FLOWは台湾最大のAIデータ処理チームとして、台湾と日本をはじめ世界各国からの保安検査プロジェクトに携わってきましたが、AIによる損傷検知を一足早く実現するためには重要な前提条件があることがわかりました。それは、

学習に使われるデータは「精確」でなければならないことです。

精確とは、「正しいデータ収集」と「精確なアノテーション」両方を兼ね備えてはじめて成立するものです。

例えば方向センサーを搭載したドローンなら、人力での撮影よりも多く、厳しい角度の写真データを集められるし、ついてに建物の座標軸を記録して3Dモデルに出力することで幾何学的解析を行うことも可能。しかしながら、同じカメラでも空から撮影するドローンと目線の高さで撮影する人間では大きく異なります。撮影に移る前は、最終的に作りたいAIアプリのことを考えて写真データの角度、光の向き、距離などの条件について細かく計画する必要があります。

写真データを収集する際は、実際に検査で使う機材で撮影することを推奨しますが、同時に画像の解像度についても注意を払わないと、せっかく手間をかけて収集した写真がAIモデルに使用できない、なんてことになりかねません。


わからないことは建築の専門家に相談

判断に迷う状況に遭遇した場合、我々はすぐさま自社のBIM事業部に相談を持ちかけます。

弊社のもう一つの事業部門であるBIM(building information modeling)は台湾でトップ3に入る建築3Dモデリングチームです。10年以上のモデリング経験を持ち、建物の内部・外部構造を熟知しています。

つまりアノテーションルールが行き詰まった時は、すぐにBIM業界で十年、二十年の経験を持つ建築専門家にアドバイスを求め、お客様、弊社AIチームとBIMチームで話し合い、業界現場の実情に適した判断をすることが可能というわけです。また、専門家との交流はプロセス最適化と、より効果的な検証方法の確立にも役が立ちます。 (FLOWのプロジェクトマネジメントについてもっと知りたい!こちら:随時フィードバックでトラブルを転機に変えよう

橋の錆くらい大げさな、と思う方もいらっしゃるかもしれません。

弊社のAIチームにもそんなふうに考えていた時期がありました。専門家に相談して初めて錆の物理的特徴について知り、影やシミ、色濃いコケなどを錆だと誤認しないように最深の注意を払い、機械に間違ったデータを学習させないように尽力しました。

また、錆の形はあまりにも不規則なため、最初は「ポイント・ツー・ポイント」のやり方で作業しましたが、効果はイマイチで、後に「面積」に切り替えてラベリングを行うことで機械学習の効率を格段に向上させました。

建物のひび割れのケースでも、対象物の形が「線」だからといって難易度が下がるわけではありません。同じひび割れでも、明確な一本の割れ目から肉眼では判別し難い蜘蛛の巣のような不規則なものまで、作業難易度は様々です。


アノテーターの道具箱

画像出典:FLOW

「工、その事をよくせんと欲せば、必ずその器を利とす」という中国の諺にある通り、アノテーションも同じです。普段から各種各様の道具を揃えるだけでなく、その業界のAI運用に応じて最適のツールを見極め、効果を最大限引き出す上で品質向上を図ることが重要です。

弊社が協力してきた100件以上のデータ処理プロジェクトの中には保安検査、スマートシティ、防犯監視など数多くの分野を跨り、自前のプラットフォームと充実したツールに加えて、専門的な教育訓練を通じてアノテーターを「熟練した各種ツールの使い手」に仕上げるべく育成に取組んでいます。。

例えば不規則なひび割れに遭遇した時でも、即座に的確なツールを選出し対応できます。大面積の対象物を処理する場合はポリゴン、連続した線の場合はポリラインで、必要に応じてブラシで細かいところの処理も行います。いかなる細部でも見逃さず、最大限の品質での納品を追求します。

人工知能とビッグデータの力さえ借りれば、橋梁点検を今までより少ない労力で大きな成果を挙げることも夢ではありません。

画像出典:台湾国家実験研究院、工研院、IBM公式サイト

【データ処理の戦略的思考】防犯監視はデータから始めます

185億ドル規模のポテンシャルを秘めるスマート農業、デジタルトランスフォーメーションの鍵はAIとデータにあり!