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AI命題の見つけ方

文/ Flow AI Blog 編集部

【要約】AIを導入する3つのコツ:
1. 4つの心得をマスターして正しいAI命題を見つけよう
2. AIプロジェクトの理想的な実施期間について理解しよう
3. 正しいAIチームを構築しよう

今までのシリーズでは、弊社が携わってきた二百件以上のデータ処理プロジェクトの経験から、台湾企業がAIの導入に失敗する4つの理由について語らせていただきました。

引き続き数回分の記事に分けて、元トレンドマイクロ社のベテランITマネージャーであるチャールズ・チャン氏が惜しみなく伝授してくれたAI導入の心得と正しいAI命題の見つけ方について話していきたいと思います。

心得①:AIを使うためにAIを作らない

AIに夢を見て、すぐにでも試してみたいと思っている企業は少なくありません。しかし弊社の経験上、AIを用いて問題解決する前に、まずは「この問題には果たしてAIは必要なのか?」についてよく考えておくことお勧めします。

もし既存のやり方や単純な原理で処理できる問題なら、AIに頼らなくてもいいはずです。単にAIを使いたいためにAIを作るのは、むしろ逆効果と言っていいでしょう。

AIの最も重要な役割は効率化であり、再現性のある複雑な業務に運用すれば、自動化を通して大量の反復作業を素早く捌けます。AIを最大限活かしたいのなら、まずはっきりさせておきたい問題点は2つあります:

  1. 人間がするには困難な仕事であるか?例えば、人力のみで橋や危険建物の安全点検を行うのは時間がかかる上に費用もかさむ、労災のリスクもあるため、ドローンやAIを取り入れるところが増えつつあります。
  2. 繰り返し発生し、再現性のある問題であるか?

AI開発は、生産ラインの設計に似ています。初手から複雑でスケールの大きい命題にするのは、ノウハウのない状態から自動車の生産ラインを立ち上げるのと同じくらい難しくて失敗しやすいものです。それに比べて、内職を始める感覚で単純な命題からスタートすればハードルは格段に下がります。

では、問題が本当に複雑で専門家の助力が必要な場合はどうすればいいのでしょうか?これに関しては、専門家の代わりにAIを活用するか、もしくはデータから必要なノウハウを得ることを提案します。

心得②:細かいところからスタートしよう

AIの導入にはリスクが付きものです。もしプロジェクトが失敗したら、企業はAIへの信頼を失い、再チャレンジまで何年もかかってしまうことになるかもしれません。

そのため、最初は敷居を低くして「簡単」かつ「安全」な問題から始めて、徐々にスケールアップしていくことをお勧めします。経験上、AIプロジェクトの理想的な実施期間は6から9ヶ月程度です。

ハードルを低くしたら、次は実務的な面も考えなければなりません。フェイフェイ・リ氏やLeCun氏のように、明確に定義された(well defined)問題を解決することに特化したAI界隈の「神」とも言えるべき専門家たちに比べると、商業用途のAIはより複雑で多様な問題とシチュエーションに遭遇します。企業所属のエンジニアは、「この問題は解決できるものなのか」と「どうやって解決していくのか」について考える必要があります。こういう時、AIはきっとお力になれるでしょう。

また、AIを順調に稼働させるために相性のいいツールを探すだけでなく、本当の意味で定着させるには企業の既存のプロセスに組み込められるかどうかも注意すべきポイントの一つです。

心得③:問題の本質を知ろう

仮にAIで解決したい問題がある場合、どのくらいのリソースが必要かを判断するためには問題の本質を突き止めることが重要です。つまり、その問題は「可変」(variant) なのか「不変」(invariant)なのかを見極めることです。

「不変」とは、筆跡認識、音声認識、囲碁AIのような追ってアップデートする必要のない、一度トレーニングが完成すれば長い間使用できる命題を指します。不変な問題に関して、多様性のあるデータを大量に用意することは何よりも重要な準備となります。

「可変」の場合、例えば市場予測やウィルス予測など常に状況が変化していて、毎月毎週モデルを更新する必要のある命題を指します。この類の問題で考慮すべき点はデータ処理の仕方、モデルの再トレーニング、製品化段階でのモデルを評価する方法など、前者より複雑なものとなっています。

こうして見ると、不変問題のほうが単純でコストもかからないのでスタートアップに向いていると思う方もいるかもしれませんが、かのGoogle社でも囲碁AIのトレーニングに約30億円の予算を注ぎ込みました。大事なのは、問題の複雑性をよく分析した上でどのくらいのリソースを投入するかを決めることです。

AI導入の鍵は人にあり

正しい命題を見つけることは重要ですが、それさえクリアすれば全てが順風満帆に進むわけではありません。管理者に問題点を系統的に洗い出すスキルがなかったり、AI技術に対する理解が乏しかったりすると意思決定やスケジュールにも影響を与えかねません。

弊社がこれまで見てきた中で、成功したAIプロジェクトにはある共通の特徴があります。これらのプロジェクトには、アルゴリズム開発から、データクレンジング、データ処理とモニタリングまで一手に引き受け、プロジェクト全体の流れを把握している熱意を持つ一人のエンジニアが必ずいます。

逆にもし分業が進みすぎると、データ担当のエンジニアがAI担当と連携が取れていなかったり、モニタリング担当とインフラ担当がそれぞれ自分の役割としか関わらなかったりすると、プロジェクトの失敗率は大きく上がることになるでしょう。

(画像出典:unsplash)

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